ユニークフェイスのMAZARIBA滞在記〜ユニークフェイス当事者として川崎で生きる②〜

ユニークフェイスとは、顔にアザやキズなど目立つ症状のある人を意味しています。MAZARIBAのメンバー(住人)の石井政之さんは、顔に生まれつき大きな赤アザがあり、ユニークフェイスの当事者のひとりです。この連載では、作家でも石井さんにMAZARIBAに住んでもらって感じた事を綴ってもらっています。
【過去の記事】
・第1回 ユニークフェイス当事者として川崎で生きる①

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最小限の荷物で川崎へ

引越の荷物は少なかった。シェアハウスのよいところは、生活必需品の多くがすでに用意されていること。冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、電子レンジ、ガスコンロ、インターネット(無線LAN)、食器、ベッドは購入する必要がなかった。これらの生活必需品をすべて個人で購入すると、中古で買いそろえるとしても10万円は必要だろう。引越の荷物として、引越業者に依頼しても搬送費用で10万円以上はかかるはず。これらの出費がゼロである。ありがたい。
 衣料や書籍などをまとめたダンボール5箱は、翌日に届いた。宅急便の代金は約8000円。寝具は寝袋で、二段ベッドの上段で熟睡した。
 僕がMAZARIBAで契約したのはドミトリー。1ヶ月15,000円。共益費10,000円。合計25,000円。毎月の出費はそれだけだ。

移住者として動き出す

ヘアカット&プロフィール写真撮影
ヘアカット&プロフィール写真撮影

 さっそく生活者としての行動を開始。人生で何度も転居してきたので、やるべきことは分かっている。
 役所で住民登録の手続き。住民票を発行してもらう。公共図書館の図書カード作成。地元の警察署で運転免許の住所変更。金融機関に行って、新規口座の開設。中古の自転車を購入。地図をみて、半径3キロメートルの主要な道と、医療機関、買い物スポット、などを確認。キリスト教の勉強をしている人間として、川崎区内の主たるキリスト教会に顔を出した。
 ユニークフェイス活動家としてもの行動も開始した。
 まずはユニークフェイス交流会ための会場の下見。4月に、東京都内のカフェでユニークフェイス交流会を企画していたので、そのカフェの店主に挨拶。手作りカレーと濃厚な珈琲を楽しみつつ、久しぶりの都内の散策。
 次に、20年ほど前に、一度だけ会食したことがある友人とのアポイント。ユニークフェイス活動を通じて知り合った支援者の友人である。事業家でもあるその人と高田馬場で再会。お茶してから、すぐに早稲田の美容室へ移動した。ヘアカットと写真撮影を勧められていたので、その誘いに乗ったのである。この日のために、髪を長めに伸ばしていた。店主は、僕の経歴やユニークフェイス活動を面白い、と頷きながら、僕の髪を華やかに変えていく。旧知の友人と3人でヘアカットと、写真撮影を楽しみながら時間は過ぎていった。

シェアハウスの住人たち

 MAZARIBAに2月に下見したときに入居していたITエンジニアは、結婚してほかのシェアハウスに引っ越していた。放浪の音楽家は、カネのない生活を実践する、と言い残して四国遍路に旅立っていた。facebookでその人の毎日を確認すると、地元の大金持ちの人と出会って食事を施してもらい、豪華な日本庭園のみえる部屋で熟睡していた。お返しに音楽を披露していた。
 新しい入居者との出会いが待っていた。
 関西からやってきた若者は、ドキュメンタリー映像の制作会社に就職。川崎から都内に通っていた。パートナーの女性は芸術家。ほかに看護師の男性。通信大学の学生。水商売の女性。会社勤めの女性。海外在住のフリーランスライターが営業拠点として短期入居していた。さまざまな経歴と夢をもった住人がひとつの屋根の下で暮らす。
 MAZARIBAに入居するまで、シェアハウスについてはほとんど知識はなかった。僕は新しい行動をするときは事前に情報収集するタイプだ。引越前、あまりにも忙しかったので、何も調べていなかった。入居者の人選は、オーナーの内田さんが決めたことは知っていた。MAZARIBAのコンセプトである、障害者と健常者の相互理解の場所としてのシェアハウス。これを理解した人間だけが入居している。

食材をシェアして快適生活

 理念は理念。生活は生活。
 他人が共に暮らすのである。現実には、台所をきれいに使う。ゴミだしの担当者を決めて定期的にゴミを出す。トイレ掃除、床掃除の分担。共同スペースでは、テレビを見る人、書き仕事をする人が、混ざっている。適度の距離をとりつつ、お互いに干渉しない。集中して仕事をするときは、個室に行くか、外出する。そういうメリハリのある生活と、ゆるい連帯感が心地よかった。
 放浪の音楽家は、玄米を残していた。30kg玄米をまとめて購入した彼は、すべてを食べることなく置いていったのだ。それを、フリーランスのライターの住人が、毎日炊いて食べていた。炊きすぎて食べきれなかった玄米は、おにぎりにして冷凍庫保存。彼女が、この余った冷凍玄米おにぎりを「食べていいよ」と言う。電子レンジで解凍して、レトルトカレーをかけて食べるうと実にうまかった。僕にとって、この玄米カレーの味が、シェアハウスの味である。ほどなくして、彼女はアジアの新興国にある家に戻っていった。
 冷凍玄米おにぎりを食べつくした後、僕は、玄米30kgを川崎の米穀店で注文した。約10,000円。入居しているシェアハウス仲間に、1kg370円という原価で販売したら、半分の15kgが売れた。
 食材をすこし多めに買ってしまったときは、同居人におすそ分けをする。そういうちょっとしたことが、生活のアクセントになっていった。
 川崎での新生活は順調にスタートした。

出来上がったプロフィール写真
出来上がったプロフィール写真

川崎にあるシェアハウス「MAZARIBA(まざり場)」では、入居者を募集しています。物件の詳細情報はこちらをご覧ください。
https://mazariba.jp/guide
またシェアハウスのポータルサイト「東京シェアハウス」にも写真が多数掲載されています。
https://tokyosharehouse.com/jpn/house/detail/3423/