ユニークフェイスのMAZARIBA滞在記⑤〜シェアハウスの住人は、手羽先を武器に、クリスマスの孤独と立ち向かった〜

石井政之さん
石井政之さん

ユニークフェイスとは、顔にアザやキズなど目立つ症状のある人を意味しています。MAZARIBAのメンバー(住人)の石井政之さんは、顔に生まれつき大きな赤アザがあり、ユニークフェイスの当事者のひとりです。この連載では、作家でも石井さんにMAZARIBAに住んでもらって感じた事を綴ってもらっています。
【過去の記事】
・第1回 ユニークフェイス当事者として川崎で生きる①
・第2回 ユニークフェイス当事者として川崎で生きる②
・第3回 ユニークフェイス当事者として川崎で生きる③
・第4回 住人はどんな風にユニークフェイスを受け入れたか

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■孤独死が身近に感じる

最近、MAZARIBAでは孤独死ブームが来ている。

1階の共同スペースには、「超孤独死社会」(菅野久美子著)が置いてある。

超孤独死社会
超孤独死社会

私たちの住んでいるシェアハウスMAZARIBAに孤独死予備軍が多数、生活しているという意味でなはい。オーナーの内田さんと菅野さんが知り合いだったから恵送された書籍である。
私は通読して感銘を受けた。超孤独死社会と立ち向かうために、何かしよう、という感想を持った。そのタイミングで、内田さんから、誰かクリスマスのイベントをやらないかな、と言われたので、企画することに。

以前から、手羽先を中心とした会食はやってみたいと思っていたので、手羽先クリスマスパーティを企画することに決定した。私は名古屋出身なので、手羽先が好き。手羽先ならば肉料理の中で、際限なく食べることができる、という自信がある。

さっそく個人ブログで宣伝開始した。
https://ishiimasa.hateblo.jp/entry/2019/12/16/185341

■孤独に調理する

25日の当日に準備開始。手始めに調理方法をネットで検索。

【手羽先+調理方法+簡単】のキーワード検索で判明したのは、フライパンで約10分で出来る、ということ。実に簡単である。

午前に「スターウォーズ」最新作を映画館で見て気合いを入れた。
次に、大師にあるOKスーパーにいって、食材を買い込む。
手羽先30本、手羽先のタレ、白ごま、サラダ油、固めるテンプル、キムチ。

午後4時から調理スタート。
調理のプロセスを写真撮影しながらの調理。
ひとり台所で、調理と撮影の両方をこなしていると、孤独がずっしりと背中にのしかかってくるような気がした。
午後5時半には30本の手羽先を油で揚げて完成。

クリスマスに手羽先
クリスマスに手羽先

■孤独にクリスマスパーティはスタートした

この時点で参加者はゼロ。まさに孤独である。
超孤独死社会にふさわしい、手羽先クリスマスパーティの始まりだ。

さらに孤独を味わうために、テレビのスイッチを入れた。
テレビでは幸福な人たちが、笑顔でクリスマスを楽しんでいる。
画面の笑顔をながめながら,ひとりで手羽先を食べ始めた。
美味しい。
一瞬、孤独が吹き飛んだ。

午後6時半、参加予定のKさん(入居者)がMAZARIBAに帰宅。
上階からなにやら調理する音が聞こえる。
10分ほどすると、Kさんがフランクフルトソーセージ10本を焼き上げて持ってきてくれた。ありがたい。

Kさんのフランクフルトソーセージ
Kさんのフランクフルトソーセージ

Kさんも、孤独な中年男性である。役者は揃った。
手羽先とフランクフルト。料理も揃った。
高タンパク、高脂肪で、いかにも孤独な中年男性の料理という趣である。
ふたりともアルコールには興味がない。食卓にはヤカンにはいった麦茶。
「では、はじめますか。メリークリスマス」と低い声で挨拶して、黙々と食べ始めた。

■盛り上がりはないが、孤独死社会に一石を投じたクリスマスパーティだった

お互いに、MAZARIBAに暮らして数ヶ月、どうですか調子は? という世間話からはじめてテレビニュースに出てくるカジノ汚職問題などを論じる。
とくに盛り上がることはないし、孤独をかみしめるようなこともない、はじける笑顔もない。なんとなく、普通に晩飯を食べているだけ、という手羽先クリスマスである。

そうはいっても、日本社会は超孤独社会になっているのは間違いない。そういう日本の厳しい情勢のなかで、二人の男が、孤独に対抗するために、手羽先を調理して食べた。
それだけのことが、なんだか貴い行為のように感じた。

次は、孤独に立ち向かう「カツ丼パーティ」を企画してみたい。

 


川崎にあるシェアハウス「MAZARIBA(まざり場)」では、入居者を募集しています。物件の詳細情報はこちらをご覧ください。
https://mazariba.jp/guide
またシェアハウスのポータルサイト「東京シェアハウス」にも写真が多数掲載されています。
https://tokyosharehouse.com/jpn/house/detail/3423/